麻の復活

私の祖父母は戦時中、空襲に遭遇しませんでした。
当時において、
これはかなり幸運な事といえるでしょう。
祖父母の受けた戦争による被害は、
家業の閉鎖と、若い人々の価値観の変化でした。
二人は代々織物をなりわいとする家に生まれ、若い頃から機を織っていました。
機織りの話は、私も子供の頃たびたび聞かされましたが、
特に何かを感ずるということもなく、聞き流していたものです。
経糸と横糸との構成により作成されてゆく織物は、
衣食住の重要な部分を担う、大切な産業の一つであると、私は考えています。
糸は化学繊維のほかに天然繊維があり、天然繊維には木綿や麻などがあります。
化学繊維の登場は、私達の生活を便利なものにしてくれました。
しかし、ある染織作家の女性が著作の中で述べておられますが、
化繊よりも麻や綿などの方が肌になじむとのこと。
生き物である私達人間には、
同じ自然から生まれた生き物である植物からつくられた繊維の方が、
体に合うのでしょうか。
精神的にも肉体的にも、私達の肉体に優しいのでしょう。
これは建築物に関しても同じようなことが言われており、
木材が人の心身に与える良い影響について、しばしば語られています。
大麻は日本において、昔から人々に栽培され、人々の身近な存在でした。
でも近年、大麻と言えば衣服というよりも麻薬を想像してしまいます。
これも戦争における、私達が蒙った悲劇の一つではないでしょうか。
暑さをしのぐ作用のある麻の衣服は、
わりあい南の地方や国で多く使用されているようです。
私達はかつて、麻の蚊帳を使用していました。
夏の衣服、甚平などにも適しています。
テーブルセンターや、
夏に使用するマフラー、ストールにもいいのではないでしょうか。
また、刺繍用の布地としても、綿とともに麻も使用されています。
自由刺繍に向いていますし、
ベンガルクロスのようにクロスステッチに使用されるものもあります。
ちなみに現在、家の近くの川には葛やカラムシが自生しています。
特に葛は石垣を覆うほどに繁殖するので、
年に一度は雑草とともに刈り取っていますが、
葛もカラムシも繊維を取れる植物なのです。
布にするまでにとても手間がかかるのですが、
こうして雑草とともに捨てられるのを見ると、資源活用がさけばれる今、
残念な気がしました。
ついでながらカラムシはマオともいい、
真の麻という意味だそうです。
海外に関わらざるを得ない今日の政治状況において、
綿や麻のように国際関係が作用して低迷する産業もあります。
外国との関係や貿易は、たしかに私達の生活を豊かにし、
人々の知識が広がるという利点がありました。
けれども以前は日常の食卓に出ていた伝統的な食材が消えてしまったり、
伝統的な職業の不振を招くということもあり、複雑な思いが胸をよぎります。
衣類だけでなく、建築、食品、医療にも有効な力を発揮するという麻が、
いつの日か、かつてのように復活して国の自立を促し、
私達の生活を強めてくれることを願ってやみません。

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